World

生まれつき才能を持った少年は、世界の摂理に嘆いていた。
母を殺され父を裁かれ、少年にはもう何もありはしなかった。
しかし何もかも失ったはずの、そんな彼にも唯一遺ったものがあった。
父が持っていた特別な能力。
誰も手にすることのできない、一歩間違えれば世界を脅かすほどの禁忌の力。

そうして彼は、全てを奪ったこの世界を呪いながら黒衣を纏う。

確かに誰かに望まれて、この世に生を受けた少年は、世界の愛を信じていた。
母と父はいなかったが、それでも少年は決して独りではなかった。
街の皆が、野に咲く花が、輝く世界が好きだった。
財もなければ地位もない。
決して裕福ではなかったが、それでも毎日幸せだった。

そうして彼は、より人々のことを想うため白衣を纏う。

――そのはずだった。

しかし彼等は、不幸なことにも出逢ってしまった。

互いを望む赦しの話。